脳科学から見た効果的な勉強法

学習効果を高めるには

 やる気はあるのになかなか成果が出ないという人は、勉強方法に問題があるのかもしれません。そこで、勉強方法を改善しようということになりますが、その際、手当たり次第に色々な方法を試すのではなく、学習に関する脳の機能をよく理解した上で考えた方がいいでしょう。
 学習に関する脳科学の情報を、以下にいくつかご紹介します。

記憶に関して意識すべきこと

 脳は入ってくる刺激が違うと、脳内で反応する場所が異なるため、広範囲に刺激を受けることになり、結果として活性化されます。だから新しい知識を入力しようとするなら、複数の方法(授業を聞く、テキストを読む、映像を見る、など)を取ると効果的です。また同じ理由で、1日中同じ科目をやるより、複数の科目を勉強する方がよいということも分かっています。
 脳に入ってきた情報は、脳内の海馬という領域によって重要だと判断されると、大脳皮質に送られ長期記憶として保存されます。英単語や公式など、生命に直接関係のない情報を長期記憶させるためには、何度も同じ情報を送り続けて、海馬に「この情報は重要なのだ」と認識させる必要があります。つまり、何度も復習し続けることが最も効果の高い学習法だということです。
 復習に最適なタイミングは、勉強した翌日、その1週間後、その2週間後、その1ヶ月後という周期です。再び覚えるより、思い出すようにする方が効果が高いので、まとめのページなど何も見ないで問題を解くことが大切です。その時、すぐに答えを見てはダメで、「分からない、思い出せない」という状態で苦しい思いをし、答えを見るのを焦らされるほど、記憶に残ります。
 海馬は睡眠時に情報を再生して整理するので、暗記系の勉強は就寝直前の1~2時間にやり、覚えたら忘れないうちに寝るといいでしょう。起床後すぐは新しい内容ではなく前日の復習を行うと、さらに記憶が定着します。

学習効果を高めるための生活リズム

 質の高い学習のためには、まず毎朝決まった時間に起きて体内時計を狂いのない状態に保つことが重要です。また、睡眠の質を高めるためには、就寝前にテレビやスマホを見ないようにしましょう(テレビやスマホの光が目に入ると、深い眠りをもたらすメラトニンというホルモンの生成が抑制されてしまいます)。
 起床後4時間で脳は最初のピークを迎えます。だから午前中に難しい(苦手な)勉強をするとよいでしょう。2回目のピークは夕方です。この時は処理能力が高まるので、新しいことをじっくり考えるのではなく、得意分野の練習問題を解く、復習をするなど、スピード重視の勉強をすると効果的です。

姿勢と環境の重要性

 勉強する時の姿勢も重要です。姿勢が悪いと体が疲れ、脳の働きも弱まります。体の軸が傾くことで目線も傾き、左右の目から入ってくる情報にズレが生じるため、脳の働きが悪くなり、集中力が低下します。
 勉強する環境については、全くの無音より、小さな環境音(雨音、扇風機、葉のこすれる音など)がある方が適しています。しかし、音楽を聴きながらの勉強は脳に余計な負担をかけるので避けた方がよいでしょう。
 また、勉強の邪魔になるさまざまな誘惑から逃れるためには、意志を強く持つことよりも、誘惑そのものを極力排除する方が効果的です。テレビやゲームやネットなどが存在しないところで勉強するなど、勉強場所にも工夫が必要でしょう。

感情の影響

 嫌いだと思うと脳の働きは弱まります。それでますます苦手になり、その科目が嫌いになる、という悪循環に陥りがちです。そんな時は、まず表情から変えましょう。笑顔を作るだけで表情を司る部位が刺激され、否定的な感情が生まれにくくなります。そうやって好きになる努力をするだけでも脳の活性化は期待できるそうです。
 また、ネガティブな言葉(できない、疲れた、面倒臭い、難しそう、など)は、思っている以上に脳の働きにとってマイナスの効果をもたらします。自分で言うのも、誰かの言葉を聞くのも同じです。これらの言葉を口にするのが癖になっている人は気を付けましょう。
 何事も4日続ければ脳内で習慣化されるといいます。例えば、1週間の中で4日間勉強すれば、勉強しなかった日が3日間になり、半分以上は勉強したことになります。そうすると、脳は多かった方(勉強した4日間の方)を標準とみなして習慣化されるのです。これは連続していなくても構いません。とにかく、継続的な勉強が重要であるということが分かると思います。